The Wind from Seattle

Vol. 48

The Wind from Seattle Vol. 48

シアトル美術館ロビー。スマートフォンで自撮りをしているカップルがいた。その何気なく好感の持てる、しかしとてもおしゃれにダブルマッチした服装に目がいった。少し会話をして撮らさせてもらったが、このアートの殿堂の雰囲気にさっと溶け込んだポーズがナチュラルで、互いに思いやる心の優しさも滲み出ている。こんなすばらしい二人を撮りながら感激して胸が熱くなった。何万回もシャッターボタンを押してきたが、この写真は一期一会の、自分の思い出に残る貴重な一枚だ。

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大股に歩調を合わせ、何事か楽しそうに話しながら通りを過ぎる二人。颯爽とした姿は見てて美しい。彼らの人生もきっとこんな風に前向きに順調なのだろう。

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年を取ってもこうして友達と一緒に元気に行動できるのはいいなあ。レコード屋なんて店も古くて、町も古くて、みんな古いもん仲間でずーっと時間を共有してるんだ。

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1987年にイギリスで出版された「Where’s Wally?」(ウォーリーをさがせ!)って絵本は世界中で人気だった。日本でも同じころに発売されて、よく遊んだのを覚えている。そんな頃を思い出して「Where’s Scott?」なんて言いながら大騒ぎして何枚も撮っている自分の精神年齢はいったい幾つなんだろう?

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我々は人間の共同生活の中で他の人たちと関連を持ちながら生きている。それが嫌だったら山にでも籠って自給自足するしかない。でも時にはそんな交わりが煩わしくなって、少しの間でも一人になりたい時がある。

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本を読んでいてふと外を見るとガラス戸に映る影が柔らかくなっている。なんだもうこんな時間なんだとライトを灯す時、今日は静かに時間が流れていていいなあと思うんだ。

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一人の孤独感に浸りたいなら寒~い雨の夜がいい。開店と同時にがらんとしたレストランに濡れたまま肩をすくめて入る。外をぼんやり眺めているとサーバーが水差しとメニューを持ってくる。彼女が説明する今日の特別メニューを上の空で聞き流しながら、こみ上げてくる寂しさを深呼吸して胸いっぱい吸い込むんだ。

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美味しい料理を食べてお腹がふくれると元気がでてきてムードが切り替わる。濡れた歩道も悪くない。ライトが華やかに反射して楽しい「町」って感じになるんだ。

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雨足が強くなった。人の近くへ行きたくなったし、向こうのスターバックスで熱いラッテでも飲みながら一休みだ。

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人影がない裏通りには大きな水たまり。車がバシャバシャと通り抜け、反射した街灯がゆらゆら揺れる。ぼちぼち帰るか。

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いよいよレイニーシーズンに突入したけど、まだたまに晴れる日もあって、でも澄んだ青空はなくて千切った綿みなたいな雲がのんきそうにぷかぷか。ポプラの黄葉が、まだよ、まだよと葉を落とさずに頑張って晩秋の味わいを演出してくれている。さあ間もなく灰色の世界がやってくるぞ。

( 2015.11.20 )