The Wind from Seattle

Vol. 03

The Wind from Seattle Vol. 03

今、陽光輝く日々と共に季節の贈り物である鮮やかな青と緑がここにある。夏とは云えまだ25℃に到達する日はほとんどないが光線は相当強く、車中ではクーラーをかけることになる。冬眠していた人々も外へ繰り出し活動することが多くなる時季だ。明るい光を賛歌し、萎縮していた体を思い切り伸ばし、生の歓びを胸一杯吸い込んで活力を得るのだ。

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シアトルの北にあるユニオン湖の対岸にはバラードという小さな古い街がある。この辺りを歩くといつの間にか頭につかえていた雑事がどうでもよくなるのは、空気が澄んでいて心が浄化されるのだろう。夏休みの若者達も街へ出かけ、和気あいあいとストリートを闊歩する。青春が故の悩む心も解放され、エネルギーが満ち溢れ、友と歩いているだけで楽しくて楽しくて...理由がなくてもうわーっとジャンプしたくなる年頃なのだ。

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散歩の老夫婦も商店の前の椅子に座り、一息つきながら通りがかりの人と世間話のひととき。にこにこと孝行息子の話やかわいい孫の中学校での失敗談も日課になっている。こんな平和なスペースがあるのもこの街のキャラクターなのだ。

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ウイークエンドともなれば至る所でフリーマーケット (Flea Market) が広がっている。店を出す人もショッピングする人も楽しげに会話を交わし、商売そっちのけで井戸端会議の様相だ。夏の輝きは人々の楽しそうな笑顔からも発せられ、明るくカラフルな空気は街の姿をとても躍動的に見せてくれる。青い空に木々の緑に、いろいろな色が一体となってリズムをとっているのだ。

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午後6時を過ぎてもまだ日は高いが、日の当たる部分と影の部分の明るさの差が大きくなりつつある。この頃から気温も徐々に下がり始め、歩いていても暑さは感じない。夕食にはまだ早く、ウインドーショッピングでもしながら坂を下りて波止場辺りまで行ってみるのもいいだろう。

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エリオット湾の風が心地よく流れ、眩しい西日も楽しいものだ。潮の香りと共に新鮮な生オイスターを頬張る時の幸せ感、旨みが口の中に広がったところで冷たい地ビールを喉越しに流し込む。そして船の汽笛やカモメの鳴く声が楽しい会話のBGMとは、なんて素敵なセッティングだろう。

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日が沈み始め、一日の終わりを告げる。家では妻が夕餉の支度に忙しく、子供はテレビを見ながら父親の帰りを今かと待っている。人の営みの最もほっとするひとときなのだ。我々にはいろいろな「毎日」がある。うれしい日や悲しい日、苦しい日も幸運な日も。空はそんな人々を一様に見つめながら、淡々と今日の日程を終えて夜の帳を降ろしていく。