The Wind from Seattle

Vol. 37

The Wind from Seattle Vol. 37

レストランで軽快な生演奏が始まったとき初老の男女が踊りだした。最初のデートの頃を思い出すように本当に楽しそう。二人とも気持ちをオープンにして、昔の彼らに戻ってる。

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この写真が50年先の彼女たちの元へ届けばいいなと思った。友と語らうこんなひとときが、どんなに貴重だったかを思いやる頃に懐かしんでほしい一枚だ。

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夏は、どこから来てどこへ行くのか分からないような、そんな旅をしていると思われる若者によく出会う。夏休みに単に興味で冒険をしていたり、大学の卒論テーマで様々な地域の文化を探求したり、現実から逃避してきたりといろいろだ。何か途方にくれているような雰囲気のこの二人の経験が、将来の大きな幸せのきっかけになったらいいんだけど。

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小雨が降ったり日が差したりの少し蒸し暑い日だった。湖沿いは水の冷たさで自然のクーラーが効いている。軽く風が吹いてくれれば昼寝にはもってこいの場所だ。

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こちらでは若者と高齢者との社会的な交流は日本よりも多いと思う。趣味が同じとか何かのきっかけがあるのだろうけど、年の層でグループができるのではなく、何がしたい、何ができるかでその人の行動の場が決まるのだ。会社の就職活動でも履歴書に年齢や性別、家族構成は書かないし、面接でそれを問うのも御法度で、当人が現在持つ力量や価値はそのような事で評価するものではないということだ。だから新聞やその他情報でも名前の後に(〇〇才)と書かれることはない。そんな文化なので年の差は気にしないで互いに付き合いやすい環境があるのだろう。

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レストランの入り口付近に立っている女性はナプキンらしきものを畳みながら目線はただ遠くを見つめているようで、周囲には全く頓着してない。彼女の意識は心の中の世界にあるのだろう。撮る方としてはこんな素顔が好きなんだけどね。

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自分もこうしてオーダーをとったりする仕事をしたことがあるけど、こんな風に見つめられたら手がふるえて注文をメモすることも、覚えることも、顔を上げることさえできなかっただろうなあと思い出しながらカメラを向けた次第。

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おしゃれなプードル君。撮ろうとしたらちょっと待ってねって、ぺろぺろ顔を化粧しだしちゃった。終わらないうちにシャッターを切ってしまった。はっはっ、ごめんね。

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"This is in (本来はon) account of my loving you forever" 何と情熱的でロマンチックな言葉だろう。しかしこのタトゥーには悲しい由来が潜んでいる。6年ほど前、サンフランシスコに住む女性にとてもハンサムで優しいボーイフレンドができ、幸せに過ごしていた。そしてある日彼はホームタウンがあるブラジルへ一時帰国しなければならなく、その出発の朝、彼を送り出した後、冷蔵庫の上に彼が彼女に残した一片のタイプされた「愛」についてのショートストーリーが置かれているのを見つけた。その片隅に彼のサインと共に手書きされた言葉が、「This is on account of my loving you forever」(これがあなたを永遠に愛する証です)だった…。しかし間もなく、彼が自動車事故で亡くなった知らせがきた。悲嘆にくれる彼女は、彼への永遠の愛を誓うのに自分の腕に彼の最後の言葉を彫り込んだという。このことが新聞の記事になって全国に広まってから、女性達が自分の愛する男性に向けて同じように体に入れ墨をするのだそうだ。

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この時期は、雪深くなる冬には車で走れない州の東部のカントリーロードをドライブすることができる。果てしない丘陵地帯を走っていて建造物の痕跡があると、それが何であるかも分からないのに懐かしさを感じるのは何故だろう。映画が好きで、その中でも西部劇をよく見ていた子供の頃を思い出すからか、その映像の欠けらが自分の脳裏に残っているからだろうか。

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そこでは19世紀後半の開拓時代には栄えたであろうと思われる農場の、Barn(納屋、物置、家畜やその飼料置き場)と呼ばれる廃屋もよく目にする。栄枯盛衰は国を問わず世の習いなんだと、ふとその言葉が浮かんだ。

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シアトルからフリーウエイを東へ1時間余り走ったここは、1880年代から80年続いた炭鉱や鉄道建設で賑わったRoslynという古い町で、今もその頃の建物など、面影が残されている。1990-1995年に人気があったTVドラマシリーズ「Northern Exposure」の舞台になった(ドラマではアラスカの架空の町Cicely )。住民が1,000人にも満たない小さな町はとても魅力的で、少しの間でも住んでみたいと思った。

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コーヒー、紅茶や煙草や菓子などが入っていたこれらの容器は19~20世紀初めの頃のものだろうか。ブリキ缶に描かれているロゴはどれもが個性的だし、色彩の使い方にも趣があって見飽きない。昔のデザインは実に味わいがあり、こうしてアンティークとして売られる価値があるのだろう。

別に昔の小物を収集する趣味はないけど、形や色や描かれた絵などに現代では目にしない新鮮さを感じる。周辺の町には多くのアンティークショップがあるので散歩がてら巡るのも楽しい。自分も肉体的にはアンティークだがその境地に達してなく、外見にこのブリキ缶のような深い風味が現れるとしてもずっと先のことかなあ。

( 2014.08.07 )