The Wind from Seattle

Vol. 33

The Wind from Seattle Vol. 33

裏通りを歩くと、時代の流れに逆らうかのように昔の姿をとどめ、開発された当時の街の面影を見ることができる。そこにはすっきりとしたカラフルな美しさはないが、時を経ながら塗り固められた重厚な気配が残っている。

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この辺りの住人はシンガーソングライターの彼のように、表通りとは異なる世界を維持するのを由とする。金銭的な裕福さを目標としない彼らなりの幸せな生活を楽しんでいるようだ。

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古い建物の内部も当時の価値観や文化を守りつつ、そうあってほしいと思う期待通り、現代とは一線を画する雰囲気を主張し続けてくれているのがうれしい。

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ここには、時代をさかのぼったような不思議な魅力を持つ人々が住んでいる。しかしそれは単に周囲の環境から感じさせられる錯覚だろうか。

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港への一段下がった通路の上にはアメリカ最古の市場の一つで100年以上の歴史を持つマーケットが現存し、今も市民の生活に大いに寄与している。19世紀末、アラスカのゴールドラッシュの頃は、シアトルから船で10万人もが一攫千金を求めて渡ったという。この石畳もそんな人々で溢れていたのだろう。ここを通る時、将来を夢に賭けて冒険に向かうゴールドマイナーたちの興奮と不安のざわめきが聞こえてくるような気がする。

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この裏通りに面するビルの中は、ギャラリーやレストラン、魚介、青果、生花その他いろいろな店が雑多に立ち並んで迷路のようになっている。この奥にある小さなフレンチレストランが自分の気に入りで、月に何度も通っているが、毎回新しい味の発見があって厭きることがない。

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フレンチといえばロココ様式を模した、気軽に入るのを少し躊躇させられるような優雅な高級感を漂わせるレストランが多いが、ここは田舎町の食堂といった感じのごくありふれた場所なのだ。食事の間はドア横のフックに不要な傘やコートなどをぶら下げておけばいい。

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食事をしている人たちは、知らなくてもまるで以前からの知り合いのように互いに軽く会釈をしたり微笑みをかわしたりしていて、そんな光景を見ているうちに、自分もいつの間にかここの空気に馴染んでしまっている。

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ランチはディナーとほぼ同じメニューだが量が少なめ(それでも十分)なのがいい。入り江から差す陽がアンティークな家具に反射して光を部屋全体に投げかけ、有名店に引けをとらない味と共にひと時の安らぎを与えてくれる。

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表通りにでると、広い空間と葉が落ちた街路樹でやけに殺風景だが、いやいや、若いカップルの楽しげな表情で曇り日でもストリートは明るく輝いている。はっと現実に戻り、何故かほっとした満足感で足取りも軽い。

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こちらが微笑みを浮かべれば向こうも返してくれる。表通りだって満更悪くもないよね。彼は言ったね、「 I am No.1 ! 」だと。何のことか分からないけど、その意気で人生を愉快に乗り切ってくれたらいいんだ。

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ありがとう。弱々しく見える我が小さな足は72年もの間大きな故障もなく堂々と行動を共にしてきてくれた。その偉業を誇るでもなく、いつも控えめに仕えてくれる勇者だ。

ソファに寝っ転がって、年男としての抱負は?なんて、行き当たりばったりに暮らしてきた自分らしくない洒落たことを考えていたら、案の定うとうとして、目が覚めた時自分の足がガーンと視界に入った。おーー何という失態か。いかんいかん、こんな大切な相棒に感謝するのを生まれてこのかた忘れていたとは、、、。今まで本当にありがとう。今年もよろしく!