The Wind from Seattle

Vol. 32

The Wind from Seattle Vol. 32

冬枯れの茂みに入ると冷たい空気に包まれて皮膚がぐっと縮み、体が締まって意識がしゃきっとするのが気持ちよい。草の上に敷かれた霜がステップを踏む毎にサクサクとリズムを奏で、時折小枝が折れてパシッと拍子をとってくれる。晴れ上がった空は茶色の世界に彩りを添え、これぞ自然の優しいなぐさめか、厳しい冬の風景を豊かに見せていた。

enter image description here

深いブッシュを抜けると葉が落ちた立木が朝の光を受け、その暖かみを懸命に吸収しているのか、周囲の気温もすこし上がっている。霜の下の枯れた草が明るく輝いて、茶色からしっとりと濡れた黄色に変化していく色取りが美しい。

enter image description here

enter image description here

立木の向こうに豊かな水量の川がゆったりと流れている。水が冷たいのかまだ表面に靄がうすくかかり、水鳥の姿が現れたり消えたりして昔の活動写真のようだ。ときおり小さく犬の声が聞こえ人里が遠くないのが分かる。静かに動いていく水は自分の年月のように後戻りはしない。ふと過ぎ去る2013年をふり返り、一つ一つの出来事を懐かしく思い出す。

冬らしい透明感を表したくモノクロで撮った。しかし空の青、日が当たる草木の茶、水に映り込む白い雲もすてがたく、カラーでもシャッターを切った。ELMARIT 28mmの特質か、青みがかって沈んだ色調がこの季節に似合う描写をしてくれる。通常同じ風景を2枚並べて載せることはしないのだが、それぞれの趣を参考までに見ていただくことにした。

enter image description here

enter image description here

これも同じくモノクロとカラーの描写によってそれぞれの表現の異なりが面白かった。レンズは2枚ともタンバールで設定もほぼ同じだ。モノクロは前の茂みから橋を抜け、湖の向こう岸や背後の霧がかかって薄く描かれる森に目が行き、その遠景に興味が走る。そしてカラーは先ず手前の紅葉した木や落ち葉で美しい湖畔を想像でき、黄色くなった対岸に目が移ると、あちらへも行ってみたくなる。

enter image description here

夏の暑いストリートより、寒くなっても立ち話が多く長くなるのが秋、冬かな。家族や友人で集うホリデーシーズンは年間で最も人恋しくて連帯感も深くなる時期なのだ。そんな交流があってこそ、時には「孤独」になる時間もその状況を楽しめるんだよね。

enter image description here

晩秋の重く雲がたれた日々に、突然青空が広がり温かな日光が降り注ぐと、人々はこうして急いで外へ繰り出す。日向でほっと出来るひとときを楽しむのだ。夫は仕事の夢を、妻は家族旅行のこと、そして二人で子供の将来を話しているのかなあ。

enter image description here

僕、ぶんちゃんっていうんだ。まだ自分の分が(賢い語呂合わせでしょ)回ってこない。他の連中は前菜とサラダも終わってそろそろメインに入ろうというのに、何でこんな仕打ちを受けなければならないのだろう。先日、床においてあった訪問客のよく光ってる靴がすこしカビくさかったので、匂い消しのつもりでオシッコをかけてあげたんだけど、それがいけなかったのだろうか。いやとに角不愉快極まりないとはこのことだわん!

enter image description here

モノクロではなくカラーで撮らなくては意味がないと思えるモチーフに出会うとうれしい。逆の場合もあるのだが、チョイスは一つというのはいいね。どちらにしようかと思考をめぐらせることもなく、直球でイメージに入り込むことができる。ワインの赤がいろいろな思いをかき立ててくれるのだ。う~ん待てよ、、、これがモノクロだったらどうだろう。タイルのラインやグラスの影、明暗のグラデーションが面白いパターンを描いてくれるのだろうか、、、、、いかんいかん、これは純粋にカラー写真がいいのだ。迷わんうちに早く飲んでしまおう。自分の顔もこの色になってきたし。

enter image description here

これ好きなんだ。記念写真を撮ってもらっている二人は本当に幸せそう。結婚しているのかどうか知らないけど、こんな素直な笑顔を見ると絶対ハッピーな人生を送ってほしいと思うし、こちらもうれしい気持ちにさせられるんだよねえ。今日はいい日だ。

enter image description here

シンプルな構図に魅せられた。時と場所などの現実を超えて迫ってくる不思議な空気感の中に自分は浸っていた。暫くして強烈な光が影を引き裂きだしたのに気づき、はっと我に返ってシャッターボタンを押し続けた。的確にこの描写の表現を語ることができなく、いや語る必要がない単なるモノクロ写真であるが故にイマジネーションの眩惑から逃れることができないのだ。

今年は写真展を実現でき、更にこのThe Wind from Seattleも相変わらずフォローしていただき感謝しています。本当にありがとうございました。皆さまには素晴らしい年をお迎えになりますよう。そして来年もよろしくお願いいたします。